原発CM出演経験は作品にどう影響していくのか―大林宣彦監督最新作「野のなななのか」が気になる
ひげもじゃのおじさんがなぜこんなにも乙女チックな映画を作れるんだろう?と思うことの多い監督さんです。とりわけ有名なのが、生まれ故郷を舞台にした尾道三部作、『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』。
大林 宣彦(おおばやし のぶひこ、1938年1月9日 - )は、日本の映画監督。撮影所システムで育った映画監督ではないとの理由から本人は「映画作家」と称している。広島県尾道市東土堂町生まれ。尾道北高校卒業、成城大学文芸学部中退。2006年(平成18年)4月から尚美学園大学大学院芸術情報研究科教授。2007年(平成19年)4月から倉敷芸術科学大学芸術学部メディア映像学科客員教授。 妻は映画プロデューサーの大林恭子。長女の大林千茱萸(ちぐみ)は「映画感想家」と称して執筆活動をする一方で映画製作にも参加している。劇作家・演出家の平田オリザは甥にあたる。 自主製作映画の先駆者として、CMディレクターとして、映画監督として、日本の映像史を最先端で切り拓いた"映像の魔術師"。
地元九州で流れていた原発コマーシャル
大林監督といえば思い出すのが地元、九州で流れていた原発コマーシャルです。
当時、「原発って賛否両論あるのに、コマーシャルに出演して大丈夫なのかな?」と不思議に思っていました。
大林監督は乙女チックな作品を多く演出していますが、中には天安門事件のあおりを受けた作品『北京的西瓜』など、社会問題を直球でなく変化球で表現した映画も作っています。だからというわけではありませんが、安易な気持ちでCM出演したわけじゃないだろうとは思いつつも、表現者としてリスキーすぎないか??と本気で思っていました。余計なお世話なんですけど。
そして3.11が起きました。福島の原発が爆発した後に私はこう思ったのです。
「大林監督は今、この現実をどう受け止めて、何を思ってるんだろう?」
「映画撮る機会が無くなるんじゃなかろーか」
震災後は反原発に
震災直後に「現代ビジネス」というサイトが、「原発やめますか、続けますか、史上空前のアンケート」として、企業のトップや有識者にアンケートを行ったそうです。
- 国内にある54基の原発をできる限り早く、すべて運転停止すべき→6人
- 段階を踏んで、順次停止していくべき→30人
- 福島第一、浜岡の2つのみ停止し、それ以外は稼働を続けるべき→1人
- 浜岡原発も含め、安全性が確認され次第稼働すべき→7人
- 答えられない→5人
- 該当なし→1人
有識者の中には大林監督も含まれていました。
当時、彼の出した答えは「1.全て停止」。コメントとしてこう残しています。
「発達しすぎた文明はいつか人類を滅ぼすだろう」とは20世紀初頭の警句。現在の知力では2と答えるのが精一杯だろうが、ここは思い切って本能で「怖い!」と。今は知力より本能を信じよう。前進し続けるより立ち止まってみよう。
大林監督の言動を「手のひらを返したもの」として非難している方もいるようです。
原発推進CM出演経験は作品にどう影響していくのか
私の関心は、単に、今後大林さんはどんな映画を作っていくのだろう?というところにあります。原発推進CMに出演してきたことが、彼の思想にどういう影響を与えて、映画にどう反映されていくのか。そこが気になります。
震災後は映画撮っていないだろうと思っていたら、2012年公開作品があったんですね。『この空の花 -長岡花火物語』、まったくノーチェックでした。
細々と公開されて人知れず終わっていったのかと思いきや、少しずつ口コミで評判になっているそうです。
そして現在公開中の新作『野のなななのか』。常盤貴子さん主演です。舌を噛みそうなタイトルですが、この「なななのか」は、仏教の「四十九日」を意味する言葉なのだそうです。
東京だと千代田区の有楽町スバル座と練馬区のT・ジョイ大泉で上映されています。
要チェックですね。
なお、5月31日(金)から6月6日(金)までは神保町シアターで大林宣彦監督代表作の『時をかける少女』(主演:原田知世)が観られます。こちらも要チェック!
家に居場所がない65歳以上のおじさまたちに捧げる 来週の名画座ラインナップ(’14/5/26~) - 名画座さんぽ
映画な日々と国際協力の仕事をゆるーく融合させたいブログ
名画座さんぽ、書いているのはこんな人(プロフィール)