国際協力の仕事と映画な日々

映画な日々と国際協力の仕事をゆるーく融合させたいブログ

写真展でアンケート実施:ペーパーに比べてオンラインアンケート回答率が1.9%だった件について

毎年、一般の方に自団体の活動理解を深めてもらうことと新規寄付者開拓を目的とした写真展を開催しています。

素人ではないプロのフォトジャーナリストが、時間をかけて被写体との距離を縮め、想いを凝縮して撮影した写真は、やはり見る人を惹きつけます。

ちゃんとしたギャラリーで写真展を行うのは、コストも手間もかかります。ですが、ネットで簡単に画像検索できるお手軽な時代だからこそ、写真家が想いをこめて切り取った一瞬一瞬、それを大きく引き伸ばしたプリントや明確な意図をもって構成された展示形態、BGM含めた空間演出というものに「価値」を見出して足を運んでくれる人も増えてきたように思います。

そういった方々の中には、活動に参加してくれたり、応援を始めてくださる方も確実にいます。決して多くはありませんが。

 

今年の写真展はシリア難民がテーマでした。 世界的な関心が非常に高まった時に開催時期が偶然重なったため、多くのメディアに取り上げられて、メジャーテレビ2番組が取材・放送してくれました。その結果、例年の約倍の来場者にシリア難民の現状や私たちの活動を写真を通して伝えることができました。

写真展は終わりましたが、シリア難民支援は今後も続きます。これからは、来てくれた方々をどうやって団体ファンになってもらうか、今後もイベントに来てもらったり寄付をしてもらえるようにつなぎとめるか、というのが課題になります。 

 

meigazasanpo.hatenablog.com

 

ペーパーとオンラインアンケート、どちらがより回収できた?

どうやってファンになってもらうか、という次につなげていく部分で大事にしているのが会場でのアンケートです。

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例年、A4表裏に印刷した1枚のアンケートで、満足度や来場きっかけなどを聞いていましたが、マホユーザーも増えたことだし今年はオンラインアンケートも用意しておこうと思い、アンケート用紙上にQRコードを掲載してみました。

 

10代にも人気の高い安田菜津紀さん撮影による写真展でもあり、オンラインアンケート回答率が3割ぐらいかな?と事前予想していたところ、
結果は






ほとんどの方はペーパーで回答してくださり、オンラインアンケート回答率は全体のたった1.9%しかありませんでした。

 

ちなみに使用したのは、無料セルフアンケートASP『Questant(クエスタント)』 -MACROMILL-

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スマホで使いやすいかなと利用してみましたが、有料版にアップグレードしないと集計結果をダウンロードできないというNPOに不向きなサービスだったので、次回以降は使いません。

 

実際、QRコードを読み込んでオンラインアンケートにアクセスしてくれた方は多かったのですが、その内7割以上の方が途中で回答することを止めていました。質問項目が多いと感じさせてしまったのかもしれません。

 

オンラインアンケート回収率が事前予想から大幅に減ってしまった理由としては、「報道ステーション」「おはよう日本」 という非常に視聴率の高いテレビで報道され、主にその番組を見ている50代以上の方が多く来場されたことが考えられます。まだ集計途中なのですが、「来場きっかけ」も圧倒的に「テレビ・ラジオ」が多く、34%です。放映後に回収されたアンケートの未集計分も加えると、これからさらにパーセンテージが伸びるように思います。

テレビ離れが進んだとは聞くものの、やはりまだその効果は絶大です。

 

オンラインアンケートやってみたまとめ

写真展オンラインアンケートの実施が効果を出すためには、

  • 写真展のメインターゲットがスマホ入力を厭わない若者
  • 質問項目を2~3に絞り込む

というのが望ましいでしょう。

ですが、そもそも私たちの写真展開催目的には「ファン(支援者)を増やす」という大前提があり、質問項目は必然的に多くなります。また、社会的なテーマの写真展に来てくださる方は意識の高い方が多く、「感想」欄に長文で熱い思いを書いてくださる方が多いです。これは主催者としてとてもやりがいを感じますし、写真家さんも喜びます。

そういう事情もあり、 そもそも国際理解促進のための写真展にはスマホオンラインアンケートは不向きかも、という結論に(今のところは) 達しております。

 

追記、「満足」の意味するもの

そういえば、写真展「満足度」を5段階で測る質問項目もあるのですが、数人の方から、「こういうテーマ(シリア難民)の写真展で『満足度』というのは 不適切だ」というご指摘をいただきました。

確かに、、不謹慎だし相応しくないです。

でも、まだ、代替案が思いつきません。。。
(どなたか良いお知恵があれば教えてください)

 

以上、国際NGOの広報現場からの報告でした。

 

 


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写真展の「顔」になることができなかった写真のこと

3歳のシリア難民の男の子、アイラン・クルディちゃんがトルコの海岸に打ち上げられた写真は世界中に衝撃をもたらしました。

一方、シリア隣国ヨルダンで数年前からシリア難民の子どもたちに教育支援を行っている私の団体では、アイランちゃんの悲しいニュースが起きる1年以上前から、シリア難民問題に無関心な日本の人々に、少しでも興味を持ってもらおう、支援に参加してもらおうと、今年9月に写真展を開催するための準備を進めておりました。

 

私がアイランちゃんの写真を目にしたのはFacebook上でしたが、見た瞬間、日本でも関心が高まり、自分の団体にもシリア難民関連でメディアから問い合わせが増えるだろうと確信しました。

翌日には新聞でもアイランちゃんのこと、そしてヨーロッパに押し寄せるシリア難民のことが大きく取り上げられ、その日の午後には職場にもテレビ局から「シリア難民の映像を貸してもらえませんか」と電話がありました。

「私たちは隣国ヨルダンに逃れてきた難民の支援をしているので、ヨルダンにある難民キャンプを映した映像ならあります。Youtubeにアップしているので、まずはそちらを見てみてください」と同僚が答えたしばらく後に、まだ電話がなりました。

「もっと、シリア難民が大挙して押し寄せるような映像はありませんか?」

そんな映像は手元に無いため、丁重にお断りしました。

 

シリアの方々が苦境に立たされているのは、何も最近始まったことではありません。

2011年の春、ちょうど日本で東日本大震災が起きた頃から国内情勢が悪化し始め、身の危険を感じた一般市民が続々と国を離れ隣国ヨルダンやトルコに逃れ始めたのです。

そして2015年の今、隣国ヨルダンは難民受け入れの限界に来ており、行き場を失ったシリア難民がヨーロッパをめざし、海で犠牲になる方々が後を絶たないのです。

 

アイランちゃんの写真で世界中の人に芽生えた意識を、一過性のものにしてはならないと強く思います。

 

今回、写真展で展示している作品の中で、難民キャンプの学校で教鞭に立つ臨月の女性教師の写真と、彼女が出産後1歳になった子どもと一緒に写っている写真があります。

シリアから逃れてきたその女性教師は、こう語ります。

「この子は故郷も知らないけれど、戦争も知らない。それが一つの救いです」

 

もう一枚、お見せすることはできないのですが、今回の写真展で展示している、ある写真について紹介したいと思います。

その写真は、ヨルダン北部にあるザアタリ難民キャンプ内の数少ない学校で撮られたものでした。

大きく太陽と青空、そしてその下に一軒の家が描かれている壁。その前でにっこりほほ笑む10歳ほどの二人の少女を写した写真。

この絵はシリアから逃れてきた子どもたちが、美しかった故郷を思って描いた壁画で、その前にたたずむ少女たちの表情も良く、当初は今回の写真展の代表写真に決まっていました。

ところが、リリースも済ませてFacebookで告知を開始したところ、すぐさまヨルダンチームからその写真を使わないで欲しいと連絡が入ったのです。

理由を聞くと、壁に描かれた画の上にアラビア語の文字が書かれており、この写真が拡散されると、写っている少女たちやその家族、さらには現場で活動するスタッフも危険にさらされるから、という答えが返ってきました。

確かにSNSで拡散され始めると、すぐさま国境を越えて、写真は一人歩きを始めてしまいます。

私たちが壁の傷か何かだろうと思っていたものは、実はアラビア語で、しかもアサド政権を批判する内容の文言でした。

早急にFacebook上から写真を削除し、写真展の代表写真を別のものへと変更しました。

作品自体はとても心を打つものなので、写真展会場での展示は継続することに決め、「撮影禁止」マークを取り付けました。

現場チームに事前確認をしなかったことは、今後の反省課題です。

 

国際理解促進や、団体認知アップのために毎年写真展を開催してきましたが、今年は開催直前に世界に衝撃を与えたアイランちゃんの写真と、変更せざるを得なかった元代表写真のことがあり、改めて良くも悪くも写真の持つ力、そしてSNSの力を痛感する年になりました。

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写真展は9月23日(水祝)まで新宿御苑近くのギャラリー「シリウス」で開催。
間に合う方はぜひ。

knk.or.jp

  

 


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身近な人の死に接して思ったこと

はてなブログにログインしようとして、IDとパスワードをすっかり忘れていることに気付きました。

7月に上司が急逝し、何も書くことが思いつかないまま2ヵ月近く放置していたのだから、無理もないです。

約12年間、職員数が5人に満たない頃からずっと一緒に働いていたので、家族のような存在でもありました。

名刺交換のやり方から企業対応など、たくさんのことを教わりました。

 

まだ実感がわかず長期海外出張に出ているような気もします。

職場の上司を家族のように思えることって、実はすごく幸運なことなのだろうなと改めて思います。

 

 


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