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税金3,000万円で作った「子供の未来応援基金」ウェブサイト。適正価格はいくら?

子どもの貧困対策のために寄付を募る「子供の未来応援基金」が話題になっています。

 

民主党蓮舫参院議員はきのう2日(2016年3月)の参院予算委員会で、子供の貧困対策基金を募り2000万円が集まったが、そのためにかかった費用が2億円で、費用対効果が悪すぎると追及した。2億円の内訳は広告代理店に6500万円、ホームページ作成に3000万円、インターネットの広告代金7000万円などだ。

「子供の貧困対策基金」2000万円集めるのに2億円!広告代理店やHP制作費 : J-CASTテレビウォッチ

 

記事を読んでいて、ホームページ作成に3000万円というのに目が飛び出ました。

私も長年NPOで広報、ウェブ担当をしておりますが、「いかにコストをかけずに広報成果を出すか」という思考回路が染みついていて、金額の大きさに驚いたのです。

早速「子供の未来応援基金」のサイトを見に行きました。

www.kodomohinkon.go.jp

 

スマホとPCの両方で確認しましたが、ちゃんとモバイルフレンドリーでした。いいなあ。

 

サイト構成はグローバルナビゲーションがホームを入れて9つ。

①ホーム

②政策紹介:イラスト情報

③支援情報の検索:検索システム

④団体と企業の交流:データベース

基金ページ:寄付方法、他団体のクレカ決済システム等ページへリンク 

⑥取組事例:内閣府へのリンク、厚生労働省へのリンク

⑦キッズページ:アニメーションでの趣旨説明、③へのリンク

⑧応援メッセージ:政治家、経団連の方、スポーツ選手など6人のメッセージ(動画)

⑨法律・大綱:関連した法律、調査研究などへのリンク(PDF×8、外部サイト×5)

 

③④にはある程度コストをかけているのかもしれませんが、肝心の⑤寄付ページは外部サイトに丸投げなので、ほとんど費用はかかっていません。

私の素人以上プロ未満の肌感覚だと、このサイトの制作費は10分の1(=300万円)でもお釣りが来そう・・と思ってしまいます。

 

寄付集めにお金はかかるもの?

ところで、この蓮舫さんの指摘について「間違っている」と反論された方がいました。日本の子どもの貧困問題に取り組んでおられるNPOの代表の方です。

「寄付集めはお金がかかるものであって、2億でも」と言いたくなる気持ちは理解できるのですが、その説明のために、国際協力団体の募金活動費を例にあげるのはどうなんだろう?と感じました。

この方は、ブログの中でこうも述べておられます。

私たちは,あまりに寄付が集まらずくじけそうに時に、自重気味に「日本人にとって、子どもは、犬猫以下だから」と言うことがあります。
原文ママ

 

随分ぶっちゃけるな・・と思いましたが、実際、最近のクラウドファンディングでは動物保護団体の飛躍が目立ちます。

寄付集めには広報が大事で、広報では共感を呼ぶ写真やメッセージが必須です。一気に拡散されるSNSが浸透してきた結果、広報に適した写真を持つ団体、戦略的に使える団体がファンドレイジングに成功しているのは事実だと思います。

「日本の子どもの貧困」というテーマだと、プライバシー保護や肖像権などで、そもそも支援対象(貧困家庭の子ども)の写真が使いにくく、支援内容がわかりにくいことが高い壁になるのでしょう。だとすれば、尚更子どもたちのために知恵を集めてファンドレイズを成功させてほしいものです。

寄付集めの苦労は理解できるし、おっしゃりたいこともわかるのですが、最初に提起された「費用対効果」という論点からは微妙にずれていると感じました。

f:id:meigazasanpo:20160305050402p:plain

私も10年以上NPOの広報とファンドレイジングに携わってきて、マーケティングの重要性だとかを認識し始めたのは、まだほんの数年のことです。それでも意識を変え、細かくPDCAを回すようになってからは、少しずつですが確実に成果は出ています。

寄付集めは、お金をかけさえすれば結果が出るというものではありません。ましてや気持ちのこもった寄付から使わせていただくのだとすれば、費用対効果を見極めるというのは、ごく当たり前でとても大事なことです。

そういう意味でも、あのウェブサイトに3000万円かけてしまうセンスの持ち主に、私のナケナシの税金を預けていて日本は大丈夫なんだろうか?という気持ちは消えません。

 

政府が募金を主導することへの違和感

個人的には、政府が市民に寄付を呼びかけることについて、どーしても違和感が拭えません。

少し話は変わりますが、昨年12月に日本に寄付文化を根付かせるべく寄付月間「Giving December」という取り組みがあり、そのキックオフイベントにゲストで来ていた小泉進次郎さんがこんなことをおっしゃっていました。

「1日1人1円。それでも年間365億円になり、それは、貧困児童と一人親家庭への支援の国家予算が年間366億円とほぼ同額。民で民を支える仕組みをどんどんもりあげていく動きになってほしい。」

 

一瞬マイナスイオンを浴びたような清涼感に包まれて「素晴らしい考えだ!」と思いましたが、わりと直後に違和感を感じたのです。

 

あれ?私これやってなかったっけ。納税で。

すでに税金として納めていて、福祉にはその税金を充ててもらっているはずだという思いがある分、政府がさらに寄付金を募ることに抵抗を感じるのでしょうか。

民間のNPOが子どもの貧困対策として寄付を募るのは全然ありですし、歓迎します。

だけどやっぱり政府が募金を主導するのは・・どうなんでしょう。

 

最後に、うちのウェブサイトは「子供の未来応援基金」の20分の1以下のコストで一昨年リニューアルしました。そして幸運にも助成金を得ることができて、全額カバーされました。やほー!

昨年サーバーを引越して大幅にランニングコストを抑えられた一方で、インターネット寄付は順調に伸びていて、費用対効果としてはハナマルです。

 

 

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